怪文書日記

なにもわからん

歌舞伎座・一幕見チャレンジ

機会があって歌舞伎座で歌舞伎を観てきた。
歌舞伎は学生時代に体験講座みたいなもので一度観たきりで、特にその後も興味はなかったけれど、意外とお手軽で楽しかったので記録しておく。

一幕見席のつかいかた

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今回は歌舞伎座の一幕見というシステムを利用した。かんたんに説明すると、公演をちょっとだけ観られるシステムである。
まず、現代の歌舞伎座での興行形式について説明する。基本的に公演は昼の部・夜の部に分かれていて、チケットも基本的には部単位の販売となる。
それぞれの部では複数の演目が演じられる。一つの劇を通しでやることは珍しく、いくつかの劇の複数の場面で構成されていることが多い。江戸の頃にできた作品は通しだと死ぬほど長いそうで、全上演などとてもやってられないレベルなのだという。そういうわけで、現代では人気のある名シーンだけより抜いたプログラムを組むのが通常になっているそうだ。なんだか不思議に思うけれど、これは以前「ジブリ作品を全上映してると長いので『ナウシカレクイエム』『もののけ姫のだまれ小僧』『ラピュタバルス』だけやるようなもの」という例え話を聞いて納得した。
そうしてその一幕だけ観劇することができるのが一幕見のシステムだ。通常のチケットとは販売方法が違っていて、下のような流れで観劇する。

①チケット購入
歌舞伎座1階正面玄関の脇に一幕見専門の窓口があるのでそこへ行く。幕見は全席当日券なので観たい日の当日に窓口まで来なければならない。各演目、開演のおおよそ1時間前くらいに販売が始まるようだ。土日や人気の回は並ぶというけれど、自分の行った平日夕方はなんの問題もなくあっさりとチケットを購入できた。うろうろしていると係の人が声を掛けてくれるので質問しよう。

②入場
専用エレベータで4階へ。前の演目が終わり、入れ替えが済んだら幕見席に入ることができる。チケットの番号順に呼び出しがかかるので並んで入場。席は自由席。人が多い場合は立ち見となる。

③観劇
ふつうに観劇。基本的にその幕が終わったら退場。

一般のお客さんと異なる点は入り口、あとは劇場内のお食事処や売店が使えないことくらいだと思う。イヤホンガイドの利用や筋書(パンフレット)の販売は4階でも行われているようだった。席は舞台からいちばん遠い席だけど、その分全体を見渡すことができる。花道は1/4くらいしか見えないのであきらめましょう。

実際に観た演目

二月大歌舞伎『人情噺文七元結
あらすじ:主役は江戸の左官職人・長兵衛。仕事の腕は確かなものの博打が好きで家では女房・お兼と喧嘩ばかり。見かねた一人娘のお久は家の借金に片をつけるため、自ら吉原に身売りしようと家出してしまう。それを迎えた吉原の女郎屋・角海老の女将は、お久の健気な孝行に感心し、長兵衛に五十両の大金を貸してくれることに。これで借金を返し、心も入れ替え、と思った帰り道、長兵衛は大川端で身投げしようとしている若い男・文七に出会ってしまい…。

歌舞伎の演目にもいろいろなジャンルがあるらしい。これは世話物といって、江戸の庶民を描いたものになる。落語原作、ギャグあり泣かせどころあり、江戸っ子の気風あふれる人情話で最後はさっぱり大団円。いきなり観てもついていけるようなお話だった。
尾上菊五郎さん演じるダメ親父の長兵衛はいきなり泣けど泣けど泣けどフルモンティ状態で登場。前半だけでも夫婦喧嘩・ギャグ・泣きどころと演技のポイントが多いうえ、最後まで出ずっぱりという体力の要りそうな役で、スゲーと思いながら観る。芸事の人の芸である。中村莟玉さんの孝行娘・お久ちゃんもよかった。女将と長兵衛の話し合いの間すみっこでいじいじしてたのかわいい。
今回観るにあたっていちばん心配だったのが「なに言ってるかわかんなかったらどうしよう」ということだったんですが、言ってること・起こってることはガイドなしでもだいたいそのまま理解できた。わかる演目でよかった。時代物(武士の話)だと言い回しがもっと難しいかもしれない。
庶民の物語ということもあって派手な演出はなかったけど、展開や見せ方や間合いから歌舞伎の形というか文法を感じられて、こんな感じなんだなーと思う。感想が単純すぎて申し訳ない。基本的にお約束があり、それに沿って進んでいくが、お約束に従わない味もある、というのをぼんやり理解した。

一幕見よかったところ

チケットの値段は1000~1500円前後。時間は短くて30分、長くて2時間足らず。映画より安く、そこまで時間もかからず、演目によっては人間国宝の芸を生で観られる。観劇はなんとなく堅苦しいイメージがあったけど、思った以上にお手軽だ。お手軽すぎてびびる。
歌舞伎座の場合、演目は1か月単位で変わる。これも映画に比べると入れ替えが比較的ゆるやかで、スケジュールが立てやすい。夜の部の最後の方は仕事終わりにも来られそうな感じだ(実際リーマンの人が来てた)。
なにより結構楽しめてしまったというのが発見だった。新しいジャンルの扉が開けたかもしれない。また行こうと思う。